
著者:
ほうれい線・シワ治療専門クリニック
大阪Houreisen美容皮膚科/東京Houreisenスキンクリニック
医療法人新月会 医師 齊藤秀明 ドクター紹介はこちら
「ほうれい線が気になる…」「顔だけ痩せない…」そんな悩みに「バッカルファット除去」という言葉をよく目にしませんか?
しかし、安易にこの施術を選ぶのは非常に危険です。 SNSの華やかな症例写真の裏には、「こんなはずじゃなかった」という後悔が隠されています。
なぜなら、あなたのほうれい線や丸顔の原因は、バッカルファットだけではないからです。
この記事では、バッカルファットの真実から、なぜ安易な除去が危険なのか、そしてあなたの悩みに本当に効く、より安全で効果的な治療法までご紹介します。
失敗しない小顔・ほうれい線治療のために、ぜひ参考にしてください。
目次
そもそも「バッカルファット」の正体とは?
バッカルファットは、簡単につまむことができる、皮下脂肪の下にある頬の筋肉よりもさらに奥深くにある脂肪で、例えるなら卵の黄身のような存在です。
表面的な皮下脂肪とは異なり、自分の手で触れることはなかなか出来ません。
若い頃は、このバッカルファットが頬にふっくらとしたハリを与え、若々しい印象を作っています。赤ちゃんや子供の頬がぷっくりと可愛いのは、このバッカルファットが発達しているためです。
なぜバッカルファットがたるみやほうれい線に関わるのか?
加齢とともに顔の組織が緩むと、これまで頬の高い位置にあったバッカルファットも重力に逆らえず垂れ下がってくることがあります。
この垂れ下がった脂肪が、口元の横にぽっこりとした膨らみを作り、ほうれい線の上に覆いかぶさることで、たるみやほうれい線をより深く、濃く見せてしまうことがあります。
バッカルファットの影響は何歳から?
バッカルファットの下垂は、肌のハリを保つコラーゲンやエラスチンの減少が始まる20代後半から30代にかけて徐々に現れる傾向があります。さらに肌の支える力が弱まる時期と重なるため、余計にたるみが進行しやすくなります。
「昔はチャームポイントだった頬の丸みが、最近は老けて見える原因かも…」と感じたら、バッカルファットの影響が強まっているサインかもしれません。
ポイント
バッカルファットとは?
- 皮下脂肪とは違う、頬の奥深くにある脂肪。
- 若い頃の顔のハリを保つクッション。
バッカルファットの影響は?
- 加齢でバッカルファットが垂れ下がる。
- 垂れ下がった脂肪が、頬のたるみやほうれい線を深く見せる原因の一つとなる。
影響は何歳から強くなる?
- 20代前半まで: 頬のハリを保ち、若々しい印象を与えます。
- 20代後半〜30代: 下垂が始まり、丸顔からもたつきやたるみとして感じられることがあります。
- 40代以降: さらに下垂が進み、ほうれい線やマリオネットラインの深刻化に繋がるケースも。
なぜ、安易なバッカルファット除去は避けるべきなのか?
「それなら、垂れ下がったバッカルファットを取り除けば解決するのでは?」そう考えるかもしれませんが、多くの方にとってバッカルファット除去は推奨されません。 主な理由は以下の3つです。
1. 将来、不自然に頬がこけて「老け顔」になるリスクがあるため
バッカルファットは、いわば「若さの貯金」です。今は気になっても、50代、60代と年齢を重ねるにつれて顔全体の脂肪は自然に減少します。その時、バッカルファットが残っていれば、顔のハリを保つ貴重な土台となります。
20代や30代で安易に除去してしまうと、将来的に頬が不自然にこけ、痩せたような疲れた印象になってしまう可能性があります。一度除去したバッカルファットは元に戻せないため、取り返しのつかない結果になるリスクがあります。
2. あなたの悩みの「本当の原因」は他にある可能性が高いため
ほうれい線や頬のたるみ、丸顔の原因は、バッカルファットの下垂だけではありません。実際には、複数の要因が複雑に絡み合っているケースがほとんどです。
- 皮膚のたるみ: コラーゲンやエラスチンの減少による肌のハリの低下。
- 皮下脂肪の変化: バッカルファットだけでなく、顔全体の皮下脂肪のつき方やたるみが関係している。
- 筋肉の衰え: 表情筋の衰えにより、皮膚や脂肪を支えきれなくなる。
- 骨格の変化(骨萎縮): 加齢による頬骨の萎縮で、顔の土台が凹み、影ができてしまう。
これらの原因が複合している場合、バッカルファットだけを除去しても悩みは解決しないどころか、ボリュームが減ったことでかえって皮膚が余り、たるみが悪化することもあります。
3. そもそもバッカルファット除去が必要なケースはごく稀なため
バッカルファット除去が本当に効果的なのは、「笑ったり食事中に頬の粘膜を頻繁に噛んでしまう」ほど、バッカルファットが明らかに過剰な方に限られます。
つまり、ほとんどの場合、バッカルファット除去単独では、目に見えるほどの小顔効果やほうれい線の改善は期待しにくいのが現実です。
また、バッカルファットの周囲には顔面神経の枝などの重要な組織が走行しているため、無理な除去は稀にそれらを損傷するリスクも伴います。
バッカルファット除去以外の効果的な治療法とは?
多くの方が気にしている「顔の丸み」・「頬のたるみ」・「ほうれい線」は、先述した他の原因がメインであることが多く、ヒアルロン酸・グロースファクターによる皮膚のハリ改善、糸リフトによるたるみ引き上げなど、他の治療法の方がはるかにリスクが低く、的確な効果が期待できます。
ヒアルロン酸注入
~注入層~
主な注入層は、骨膜上や皮下脂肪層です。お悩みの原因や皮膚の構造に応じて、最適な深さを的確に判断します
- 加齢に伴う骨萎縮(こついしゅく)など、土台となる構造的な凹みが影を作っているなら、ヒアルロン酸で土台から支えるアプローチが適しています。
- ほうれい線部分の減ってしまったボリュームをヒアルロン酸で補い、下から持ちあげて改善します。ほうれい線治療の鍵は、この「ボリュームロスを補う」という考え方にあります。
- また、ほうれい線の溝そのものに注入するだけでなく、たるみの原因となっている中顔面のボリューム減少や、皮膚を支える靭帯の基部を補強するように注入すると、顔全体の構造からリフトアップさせ、より自然な改善を目指す事が出来ます。
- 持続時間:約1~2年。
- ダウンタイム:腫れは2〜3日程度。内出血が出た場合は1〜2週間で黄色く変化し吸収されます。
- リスク:極めてまれですが、ヒアルロン酸が血管に詰まってしまう「血管閉塞」という合併症のリスクがあります。当院では、血管走行など顔面の詳細な解剖学に基づいた安全な注入層の選択、先端の丸い針(マイクロカニューレ)の使用による血管損傷リスクの低減、慎重な注入手技の徹底など、リスクを最小化するための対策を講じています。
グロースファクター
~注入層~
主な注入層は、真皮層です。お悩みの原因や皮膚の構造に応じて、最適な深さを的確に判断します
- 皮膚のハリ低下によるほうれい線に対しては、コラーゲンを生み出す線維芽細胞が存在する真皮層へグロースファクターを直接注入し、肌自身の再生能力を高めるアプローチが有効です
- 皮膚のコラーゲンが増え、肌の内から弾力が生まれ、ほうれい線が改善されます。
- 持続時間:個人差がありますが、数年以上にわたって維持されることが報告されています。
- ダウンタイム:腫れは2〜3日、内出血が出た場合は1〜2週間で黄色く変化し吸収されます。
- リスク:グロースファクターにはヒアルロン酸で懸念される血管塞栓のリスクがないのが大きな特徴です。しかし、注入量が多い場合や3回・4回…と回数を重ねすぎると、膨らみすぎたりしこりになったりするリスクが高まります。
スレッドリフト(糸リフト)
~注入層~
主な注入層は、皮下脂肪層です。お悩みの原因や皮膚の構造に応じて、最適な深さを的確に判断します
- 脂肪や皮膚全体が下垂しているなら、物理的に引き上げる糸リフトが有効です。
- 医療用の溶ける糸を皮下に挿入し、たるんだ脂肪や皮膚を物理的に引き上げます。
- 即時的なリフトアップ効果が魅力で、挿入された糸の刺激でコラーゲン生成も促進されます。
- 持続時間:約半年~2年(糸の種類により異なります)。
- ダウンタイム:腫れや内出血は1〜2週間程度で落ち着きます。ただし、完全に馴染んで自然な状態になるまでには約1ヶ月ほどかかり、他の施術よりやや長めです。強く引き上げたりする場合、施術直後に肌の陥凹や引きつれ感が生じることもありますが、3〜4週間程度で徐々に馴染んで目立たなくなります。
- リスク:また、糸を深すぎる層に挿入すると、極稀に顔面神経損傷、耳下腺損傷といったリスクがありますので、技術力の高い医師が施術を行う必要があります。
それぞれどんな人におすすめなのか
ヒアルロン酸注入は次のような方におすすめです
- 無表情の時でもほうれい線が深く刻まれていると感じる方。
- 頬や中顔面が痩せてきた、こけてきたと感じる方。
- ほうれい線の溝に影ができて暗く見えるのが気になる方。
- 顔全体のたるみは軽度だけど、ほうれい線のラインが気になるという方。
- 手軽に即効性のある変化を実感したい方。
- メスを使わずに、自然な形で若々しい印象を取り戻したい方。
グロースファクターは次のような方におすすめです
- 肌のハリ不足や小ジワが気になる方。
- 年齢とともに肌の弾力が失われてきたと感じる方。
- 肌の根本的な若返りを目指したい方。
- 長期的な効果を期待したい方。
- ヒアルロン酸のような即時的なボリュームアップではなく、徐々に自然な変化を望む方。
- アレルギー反応などのリスクを抑えたい方。
糸リフトは次のような方におすすめです
- 顔全体のたるみが気になる方。
- フェイスラインのもたつきや二重あごを改善したい方。
- 即時的なリフトアップ効果を強く望む方。
- 切開を伴うフェイスリフトには抵抗があるけれど、しっかりとした引き上げ効果を期待したい方。
- 将来的なたるみ予防にも関心がある方。
- 頬の膨らみやほうれい線の上のもたつきが気になる方。
最後に
バッカルファットは、確かに丸顔・たるみ・ほうれい線の一因になることはありますが、それは数ある原因の一つに過ぎません。
将来的なリスクや、原因と治療のミスマッチを考えると、本当に適応がある人以外は、安易に除去することは決してお勧めできません。
大切なのは、あなたのほうれい線の「本当の原因」を正しく診断し、それに合った最適な治療法を選択することです。まずはカウンセリングで、ご自身の顔の状態を正確に知ることから始めてみませんか?
どのような治療が自分に合っているのか、どのタイミングで始めるべきか。もしお悩みでしたら、ぜひ一度、当院にご相談ください。
あなたの肌の状態、骨格、そしてライフスタイルを総合的に診断し、最適な治療プランをご提案いたします。
私たち専門家が、あなた本来の輝きを取り戻すお手伝いができれば幸いです。