ボトックスは、必要な量と治療間隔を守りながら、継続して受けられる治療です。額や眉間、目尻のシワを気にせず過ごせるようになって、「この先も続けたい」と思う方も多いのではないでしょうか。
実際の診療でも、「前より効きが弱い気がする」「ずっと続けても大丈夫ですか?」と相談されることがたまにあります。
ボトックスを打ち続けても大丈夫?
ボトックスは、筋肉の動きを弱めて表情ジワを改善する治療です。効果が薄れてシワが気になってきたら再治療し、シワの目立ちにくい状態を保ちます。
日本人363人を対象に、眉間へ最大5回の治療を行った研究では、繰り返しても効果が続く期間は短くならず、重い副作用も報告されませんでした。[1]
海外には、50人を平均約15年間診療した研究もあります。この研究でも、長く続けるうちに効かなくなったり、効果が早く切れるようになったりする傾向は認められませんでした。[2]
シワが深く刻まれる前の予防にも
眉間に力を入れる、眉を上げる、笑う。こうした表情のたびに同じ場所へシワが寄ると、次第に皮膚に刻まれ、顔に力を入れていないときにもシワが残るようになります。
ボトックスを継続すると、シワが寄りにくい期間を長く保てます。その分、皮膚の同じ場所に繰り返しシワが寄るのを抑え、シワが深く刻まれにくくなります。[6]
当院では、今ある表情ジワを改善するだけでなく、将来のシワを予防するアンチエイジング治療としても、ボトックスの継続をお勧めしています。
表情が不自然にならないように
ボトックスは、強く効かせるほど仕上がりがよくなる治療ではありません。額の筋肉を弱めすぎるとまぶたが重く感じられたり、目元や口元への注入で笑いにくさが出たりすることがあります。
エラでは、噛む筋肉の厚みを減らすことが小顔効果につながります。ただ、筋肉が小さくなりすぎると、頬こけやたるみが目立つ場合もあります。
当院では、筋肉の強さ、シワの深さ、表情の癖、皮膚の厚み、これまでの治療も踏まえて注射します。例えば額なら、シワを抑えながら眉を上げる動きをどのくらい残すか、ご希望を伺って打つ場所や量を調整しています。
額のボトックスでまぶたが重くなる原因/エラボトックスの効果と、頬こけへの配慮
途中でやめると、どうなる?
効果が薄れるにつれて筋肉の動きが戻り、表情ジワも再び現れてきます。治療を始めたからといって、その後ずっと打ち続ける必要はありません。
シワが気にならなければ、次の治療までの間隔を延ばしたり、いったん休んだりして構いません。
ボトックスの抗体・耐性とは?
ボトックスの有効成分は、ボツリヌストキシンというタンパク質です。繰り返し注射していると、体がこの成分を異物として認識し、抗体を作ることがあります。
抗体は、体に入ってきた異物を排除するために作られるタンパク質です。そのうち、ボトックスの働きを妨げる抗体を「中和抗体」といいます。
この中和抗体ができると、以前と同じように注射しても効きにくくなることがあります。これが「ボトックスに耐性がついた」といわれる原因の一つです。
なお、「ボトックス」はもともと製品名ですが、この記事では、コアトックスなどを含めたボツリヌストキシン製剤の総称として使っています。
中和抗体ができた場合を示した模式図です。
抗体ができる確率は高い?
美容目的の通常の治療で、中和抗体が問題になることはまれです。
美容と病気の治療を含む臨床試験の集計では、ある製剤を使用した5,876人のうち27人、約0.5%で中和抗体が確認されました。そのうち、初めは効いていたのに、後から効かなくなった方は5人でした。[3]
ただ、以前より効きが弱いからといって、必ず抗体ができているわけではありません。打つ場所や量、シワの状態によっても、効き方は変わります。
以前よりボトックスが効かないと感じたら
「効かない」と感じる理由は、抗体以外にもあります。注射してからまだ日が浅かったり、打つ量が少なかったり、皮膚に刻まれたシワが残っていたりする場合です。
| 気になる状態 | 考えられること |
|---|---|
| 注射から数日しかたっていない | まだ効果が出きっていない時期です。表情ジワのボトックスは、通常1〜2週間ほどで仕上がります。 |
| 筋肉の動きは弱くなったが、シワが残る | ボトックスは効いていても、皮膚に刻まれたシワが残っていることがあります。 |
| 以前より筋肉の動きが弱まらない | 打つ場所や量が合っていない場合があります。繰り返すうちにだんだん効かなくなった場合は、抗体の可能性も考えます。 |
| 効果が前より早く切れる | 使う薬剤や量が変わると、効果が続く期間も変わることがあります。以前はしっかり効いていたのに、回数を重ねるほど早く切れるようなら、抗体が関係している可能性もあります。 |
例えば、眉間に力を入れにくくなっているのにシワが残っているなら、筋肉への効果は出ています。長年の表情の癖で皮膚に刻まれたシワには、後ほどご紹介する肌育注射などを組み合わせることもあります。
なお、エラのボトックスは、筋肉の動きが弱まってから少しずつ顔がすっきりしてきます。表情ジワと違い、小顔効果が出るまでにはもう少し時間がかかります。
抗体が疑われるときは、どう対応する?
最初はしっかり効いていたのに、何度か受けるうちに効きが弱くなり、やがてほとんど効かなくなった。このような場合には、抗体ができている可能性があります。
抗体で効かなくなっている場合は、追加を繰り返さない
抗体が原因で効かなくなっている場合は、量を増やして打ち続けることはお勧めしません。さらに抗体が作られやすくなるおそれがあるため、治療を休むことを考えます。[4]
コアトックスなど、別の製剤に替えれば効く?
抗体が原因ではなく、打つ場所や量が合っていなかったのであれば、打ち方を変えることで効く場合があります。
しかし、有効成分に対する抗体ができて効かなくなっている場合は、コアトックスに替えても効きにくくなります。他の多くの製剤と同じく、有効成分がA型のボツリヌストキシンだからです。
しばらく休めば、また効くようになる?
治療を休んでいる間に抗体が減り、また効くようになる方もいます。ただ、数年かかることもあり、何か月休めばよいと決まっているわけではありません。[5]
長く続けるために気をつけたい、打つ量と間隔
短い間隔で何度も繰り返さない
短期間に何度も注射すると、抗体ができるリスクが高まると考えられています。表情ジワの治療では、前回の注射から少なくとも3か月は空けましょう。[4]
3か月たったら必ず打つ、ということではありません。まだシワが気にならなければ、もっと間隔を空けても大丈夫です。
必要以上に多く打たない
打つ量が多いほど、体に入るタンパク質の量も増えます。十分な効果が出る量は必要ですが、多ければ多いほどよいというものではありません。
例えば、エラの筋肉が発達している方や、ワキの汗を抑えたい方は、額や眉間のシワ治療より多くの量を使うことがあります。こうした治療を繰り返す方も、量を増やしすぎず、間隔を空けて受けることをお勧めします。
別のクリニックでもボトックスを受けている場合は、そのことも診察時に教えてください。同じ場所への注射でなくても、打つ間隔や合計の量に関わるためです。
汗を抑える治療については、多汗症のボトックス治療でも解説しています。
当院がコアトックスを採用している理由
当院では、長くボトックスを続ける方にも、できるだけ抗体ができにくい薬剤を使いたいと考え、コアトックスを採用しています。
コアトックスは、有効成分の周りにある「複合タンパク質」を取り除いた製剤です。効果を出すのに必要のないタンパク質を減らすことで、抗体ができるリスクを抑えることが期待されます。
また、ヒト血清アルブミンや動物由来成分も使われていません。これまで当院で使用してきた中では、重篤なトラブルは経験していません。
有効成分そのものもタンパク質なので、コアトックスでも抗体ができる可能性はあります。短い間隔で打ちすぎないことは、コアトックスでも同じです。
治療できる部位や効果については、当院のボトックス治療をご覧ください。
ボトックスが効いても、皮膚に刻まれたシワが残る場合
ボトックスは、表情筋の動きによってできるシワに効果的です。一方、長年の表情の癖で皮膚に深く刻まれたシワは、筋肉の動きが弱まっても残る場合があります。
このようなシワには、皮膚のハリを高めたり、くぼみを補ったりする治療を組み合わせます。
例えば、目元や口元の細かなシワならスネコスなどの肌育注射、ほうれい線や口元に刻まれたシワならグロースファクター、くぼみが目立つ部分ならヒアルロン酸が合う場合があります。
当院では、ボトックスで筋肉の動きを抑えた方がよいのか、皮膚のハリを高めた方がよいのか、くぼみを補った方がよいのかを診察して、治療をお勧めしています。
額のボトックスとヒアルロン酸を組み合わせた症例
こちらは、額の表情ジワにボトックスを注射し、くぼみや凹凸にヒアルロン酸を注入した症例です。筋肉の動きを抑える治療と、くぼみを補う治療を組み合わせています。

表情ジワ・乾燥ジワなど、シワの種類と原因
ほうれい線のグロースファクター・ヒアルロン酸・ボトックスの違い
グロースファクターとヒアルロン酸の違い
当院のボトックス料金
額・眉間・目尻など、対象となるシワ治療の料金です。表示は税込で、診察・カウンセリング・針・麻酔・施術・アフターフォローを含みます。
| 対象部位数 | コアトックス | アラガン社製 |
|---|---|---|
| 1か所 | 13,000円 | 20,000円 |
| 2か所 | 24,000円 | 30,000円 |
| 3か所 | 34,000円 | 40,000円 |
| 4か所目以降 1か所追加ごと | +8,000円 | +10,000円 |
エラ・肩・ふくらはぎ・汗止めなどは、上記とは別の料金です。部位別の詳しい料金はこちらをご覧ください。
主な副作用は、痛み・腫れ・内出血、表情の違和感、まぶたの重さ、噛みにくさなどです。詳しくはボトックスの副作用・リスクをご確認ください。
ボトックスの抗体・継続について、よくある質問
何回打つと、抗体ができますか?
決まった回数はありません。長年続けても問題なく効いている方は多くいらっしゃいます。回数だけでなく、使う薬剤や量、打つ間隔も関係します。
額のボトックスが抗体で効かなくなったら、エラやワキにも効かなくなりますか?
はい。抗体が原因で効かなくなっている場合は、エラやワキに打っても効きにくくなります。
ワクチンを腕に打っても、その腕だけに免疫がつくわけではないのと同じで、抗体は注射した場所だけにとどまるものではありません。額への注射でできた抗体も、別の場所に打ったボトックスに作用します。
韓国製だから効きにくいのでしょうか?
韓国製だから効きにくい、というわけではありません。当院が使用しているコアトックスも韓国製です。同じ韓国製でも薬剤の種類は複数あり、打つ量や場所によっても効き方は変わります。
美容クリニックで抗体の検査はできますか?
中和抗体を調べるには特殊な検査が必要で、どの美容クリニックでも受けられる検査ではありません。
「前より効かない」というだけで抗体と決めず、いつ頃から効かなくなったか、打つ量や場所を変えても効かないかなど、これまでの経過も合わせて判断します。
抗体が原因で効かない場合、スキンボトックスなら効きますか?
抗体が原因でボトックスが効かなくなっている場合は、スキンボトックスでも効きにくいと考えられます。皮膚の浅いところに打つ方法ですが、使う有効成分は同じだからです。
これからもボトックスを続けたい方、効きにくさが気になる方へ
ボトックスは、今あるシワを改善するだけでなく、将来のシワを深くしないためにも役立つ治療です。当院では、自然な表情を保ちながら、長く続けていただけるように注射しています。
「以前より効かなくなった」「シワが残るようになった」という方もご相談ください。打ち方を変えた方がよいのか、皮膚のシワを治療した方がよいのか、抗体の可能性があるのか。これまでの治療について伺い、シワと筋肉の動きを診察して、今後の治療をご提案します。
使用する医薬品について
コアトックスは国内未承認の医薬品で、韓国で承認されています。国内承認製剤にはボトックスビスタがあります。
主な参考資料
- 日本人363人を対象とした、眉間への64週間の反復投与試験(International Journal of Dermatology, 2009)
- 50人を平均約15年間診療した、顔の美容治療に関する後ろ向き研究(Dermatologic Surgery, 2025)
- OnabotulinumtoxinAの登録試験における中和抗体の解析(Toxins, 2023)
- PMDA:ボトックスビスタ添付文書(2026年8月改訂)
- 治療休止後の中和抗体価を追跡した研究(Movement Disorders, 2002)/抗体価低下後の再治療についての8例の報告(Journal of Neural Transmission, 2018)
- ボトックスを13年間継続した一卵性双生児と、治療回数が少ない双生児の顔のシワを比較した症例報告(Archives of Facial Plastic Surgery, 2006)
- Medytox:コアトックス製品情報/製造元による成分・製造方法の説明
- Coretoxの脳卒中後上肢痙縮への第III相比較試験(Archives of Physical Medicine and Rehabilitation, 2020)














