
著者:
ほうれい線・シワ治療専門クリニック
大阪Houreisen美容皮膚科/東京Houreisenスキンクリニック
医療法人新月会 医師 齊藤秀明 ドクター紹介はこちら
皆さん、ほうれい線の大きな原因が『頬のたるみ』だと知っていますか?
鏡を見るたびに気になる、口もとに深く刻まれたほうれい線・マリオネットライン。多くの患者様が「シワが深くなった」とご相談に来られます。
しかし、実はそのシワ、主な原因は皮膚のシワそのものではなく「頬のたるみ」にあります。
今回は、多くの方が悩まれている「ほうれい線」と「頬のたるみ」の密接な関係について、段階を追って詳しく解説していきます。
ほうれい線は「シワ」ではなく「境界線」
まず、最も大切なことからお伝えします。
ほうれい線は、皮膚に刻まれた「シワ」とは根本的に異なります。では、その正体は何なのでしょうか?
ほうれい線とは、頬の皮膚・脂肪と、口周りの皮膚との「構造的な境界線」なのです。
顔には、皮膚と骨を結びつけ、皮膚や脂肪が重力で垂れ下がらないように支えている「支持靭帯(リガメント)」という強固な線維組織があります。ほうれい線は、このリガメントによって頬の豊かな脂肪がせき止められて出来た、いわば「ダム」のような役割を持つ境界なのです。
若い頃は、肌にハリと弾力があり、頬全体の組織がしっかりと引き上がっているため、この境界線はほとんど目立ちません。
しかし、年齢とともに頬がたるんでくると、ダムに水がたまる様にほうれい線の上に脂肪がたまって、この境界線がくっきりと目立つようになり、深い溝として私たちの前に現れるのです。
「たるみ」がほうれい線を深くする5つの原因
では、なぜ頬はたるんでしまうのでしょうか。その原因は一つではなく、皮膚から骨に至るまで様々な場所で起こる、加齢による変化、が関係しています。家が古くなると土台や柱が弱り、壁にひびが入るように、私たちの顔も加齢とともに構造全体が変化していきます。
原因① 皮膚の弾力低下(コラーゲン減少と光老化)
お肌のハリを支えているのは、真皮層に存在するコラーゲンやエラスチンといった線維です。これらは、肌を内側から支えるベッドのスプリングのような役割を果たしています。
加齢や紫外線の影響で弾力を失った皮膚は、風船がしぼむようにハリを失い、重力に抗えずに垂れ下がってきます。これがたるみの第一段階です。
- 加齢による変化: 20代をピークにコラーゲンやエラスチンは減少し、質も低下します。
- 紫外線(光老化)による変化: 長年浴び続けた紫外線は、このスプリングを破壊し、変性させてしまいます。
原因② 脂肪の変化(脂肪の垂れ下がりと萎縮)
皮膚の下には、顔に立体感と若々しさを与える皮下脂肪があります。この脂肪も、加齢とともに大きく変化します。
- 脂肪の下垂: 頬の高い位置にあるふっくらとした脂肪は、加齢とともに萎縮し、重力によって下方へ移動します。この下がってきた脂肪が、ほうれい線の上に乗っかり、影を濃くしてしまいます。これが、ほうれい線が深くなる最も大きな原因の一つです。
- 脂肪の萎縮: また、こめかみや頬の一部は脂肪が萎縮して痩せていきます。これにより、顔の土台が減り、皮膚が余ってしまい、たるみをさらに進行させます。
原因③ 支持靭帯(リガメント)の緩み
先ほど登場した、皮膚や脂肪を骨に固定している「支持靭帯(リガメント)」、この顔の重要な「柱」も、加齢とともに伸びて緩んできます。柱が緩むと、その上に乗っている皮膚や脂肪は、まるで雪崩のように一気に下方向へとなだれ込み、頬全体のたるみを引き起こします。
原因④ 筋肉(表情筋)の衰え
皮膚や脂肪を支える土台となっているのが、表情筋です。表情筋も体の筋肉と同じで、使わなければ衰え、その上の組織を支える力が弱くなります。特に、頬を持ち上げる役割を持つ頬骨筋群などが衰えると、頬全体が下がりやすくなります。
原因⑤ 骨の変化(骨格の萎縮)
あまり知られていませんが、顔のたるみにおける根本的な原因の一つが「骨の萎縮」です。加齢とともに、顔の骨、特に頬骨や上顎骨は萎縮して小さくなっていきます。
家の土台である基礎が小さくなると、その上に建っている家が傾くのと同じです。骨という土台が痩せてしまうと、その上にある筋肉、脂肪、皮膚がすべて余ってしまい、深刻なたるみとなって現れるのです。
これらの原因①~⑤が合わさってほうれい線が深くなる
このように、頬のたるみは皮膚表面だけの問題ではなく、「皮膚・脂肪・靭帯・筋肉・骨」という顔のすべての階層で起こる全体的な変化です。その変化の結果として、ほうれい線という「境界線」が深く、くっきりと目立ってくることになります。
当院でできる「たるみ」への根本的アプローチ
セルフケアでの保湿や紫外線対策はもちろん重要ですが、すでに始まってしまった構造的な「たるみ」を化粧品だけで改善するのは非常に困難です。当院では、たるみの原因となっている各問題に直接アプローチすることで、効果的な治療を行います。
ヒアルロン酸注入
ターゲット層: 脂肪層、骨の直上
目的: ほうれい線部分の減ってしまったボリュームをヒアルロン酸で補い、下から持ちあげて改善します。ほうれい線治療の鍵は、この「ボリュームロスを補う」という考え方にあります。持続時間は約1~2年で、施術によるダウンタイムは数日程度です。
スレッドリフト(糸リフト)
ターゲット層: 皮下脂肪層
目的: 医療用の溶ける糸を皮下に挿入し、たるんだ脂肪や皮膚を物理的に引き上げます。即時的なリフトアップ効果が魅力で、挿入された糸の刺激でコラーゲン生成も促進されます。持続時間は約半年~2年で(糸の種類で変化します)、ダウンタイムは約1か月程度と、他の施術よりやや長めです。
グロースファクター
ターゲット層:真皮層
目的:コラーゲンを生み出す線維芽細胞をターゲットにグロースファクターを注射します。皮膚のコラーゲンが増え、肌の内から弾力が生まれ、ほうれい線が改善されます。数年以上の持続力があり、ダウンタイムは数日程度です。
HIFU(ハイフ)治療・DENSITY(デンシティ)治療
ターゲット層: 筋肉のすぐ上にあるSMAS筋膜、脂肪層、真皮層
目的: 超音波や高周波の熱エネルギーを利用して、緩んだ組織を収縮させ、土台から引き締めます。コラーゲンの生成も促進するため、肌のハリも向上します。家で例えるなら、緩んだ柱や梁を締め直す工事です。持続時間は半年程度で、施術によるダウンタイムはほぼありません。軽度の改善、進行の予防に効果的です。
これらを組み合わせるとさらに効果的
これらの治療は、一つを単独で行うこともありますが、たるみの状態に合わせて複数の治療を組み合わせる「コンビネーション治療」を行うことで、より自然で高い効果を引き出すことが可能です。
よくあるご質問(Q&A)
Q1. 治療は痛いですか?痛みに弱いので心配です。
A1. ご不安ですよね。痛みの感じ方には個人差がありますが、多くの治療では痛みを最小限に抑える工夫をしています。
例えば、HIFU(ハイフ)は、皮膚の奥にチクチクとした熱を感じる程度です。
お痛みが心配な場合は事前に麻酔クリームを塗布しますし、製剤自体に麻酔成分が含まれているものを使用しますので、ご安心ください。
施術中も、私たち医師や看護師が常にお声がけをしながら、痛みの状態を確認しつつ丁寧に進めさせていただきます。
Q2. ダウンタイムはありますか?仕事は休まなければいけませんか?
A2. 治療法によって異なりますが、ほとんどの方がお仕事を休まずに治療を受けられています。
- HIFUやデンシティは、肌表面へのダメージがないため、ダウンタイムはほぼありません。施術直後からメイクも可能です。
- ヒアルロン酸注入やグロースファクターは、注入部位に数日〜1週間ほど、赤みや内出血、軽い腫れが出ることがあります。}
しかし、これらはファンデーションやコンシーラーで十分にカバーできる範囲がほとんどです。
大切なご予定がある場合は、直前を避けてスケジュールを組むとより安心です。 - 糸リフトは、施術後の1週間ほどが腫れのピークで、その後じわじわと1か月ほどかけて腫れが引いてゆきます。
大切なご予定がある場合は、直前を避けてスケジュールを組むとより安心です。
Q3. ほうれい線が気になり始めたばかりです。治療はまだ早いでしょうか?
A3. 決して早すぎることはありません。むしろ、たるみが進行する前の「予防」として治療を始めることは非常に効果的です。
たるみのサインが出始めた段階でHIFUなどで土台を引き締めたり、肌のコラーゲンを増やす治療を行ったりすることで、将来的なたるみの進行を緩やかにすることができます。
お悩みの程度が軽いうちであれば、より少ない負担で良い状態をキープできますので、ぜひお気軽にご相談ください。
Q4. 深く刻まれたほうれい線はもう仕方ないと諦めかけています。今から治療をしても、不自然な顔にならないか心配です。
A4. 「もう仕方ない」と諦める必要は全くありません。そして、不自然になるのではないかというご不安も、私たちが最も配慮している点ですのでご安心ください。
私たちの治療のゴールは、シワ一本ない20代の顔を目指すことではありません。
失われたボリュームをヒアルロン酸で自然に補って骨格を支え、高周波(デンシティなど)で肌全体のハリとツヤを取り戻すことで、お顔の疲れ感や不機嫌な印象を解消し、上品で若々しい、ご自身の年齢に合った本来の美しさを引き出すことです。
ぜひ一度、そのお悩みを私たちにお聞かせください。
Q4. HIFU(ハイフ)とヒアルロン酸注入、どちらが私には合っていますか?
A4. これは非常によくいただくご質問です。二つの治療は目的が異なりますので、お顔の状態によって適応が変わります。
- HIFUは、お顔全体の組織を内側から引き締める「土台の引き締め工事」のような治療です。頬に脂肪がしっかりあり、全体的に下がってきた感覚のある方に向いています。
- ヒアルロン酸は、加齢で痩せてしまった部分のボリュームを補う「土台の補強・充填工事」です。こめかみが痩せたり、頬がこけてきたりしたことでたるんでいる方、ほうれい線の溝そのものを浅くしたい方に適しています。 実際には、この両方を組み合わせることで、より立体的で自然なリフトアップ効果が得られる方も多くいらっしゃいます。
Q5. 効果はどのくらい続きますか?一度やれば、もう何もしなくていいですか?
A5. 残念ながら、一度で永久に効果が続く治療はありません。なぜなら、施術後も私たちの体は少しずつ加齢していくからです。
ただし、各治療は老化のスピードを緩やかにし、若々しい状態を維持するためのものです。効果の持続期間は治療法によって異なり、例えばHIFUは半年〜1年、糸リフトは半年~1年以上、ヒアルロン酸は1年〜2年、グロースファクターは数年以上が目安です。
定期的にメンテナンス治療を受けていただくことで、良い状態を長く、そして効率的にキープしていくことができます。
Q6.注入治療の副作用が心配です。
A6. ヒアルロン酸やグロースファクターはもともと体内に存在する成分であり、アレルギー反応のリスクは低いとされています。
主な副作用としては、内出血、腫れ、赤み、痛みなどがありますが、これらは一時的なものです。
ヒアルロン酸施術では、極めてまれに、血管閉塞などの重篤な合併症が起こる可能性もありますが、当院では安全性を最優先に、経験豊富な医師が細心の注意を払って施術を行っております。
ご不安な点は、カウンセリング時に詳しくご説明いたします。
Q7. 費用はどれくらいかかりますか?
A7. 費用は、選択される治療法や施術の範囲(使用する薬剤の量など)によって異なります。
当院では、カウンセリングの際に、なぜその治療が必要なのかという理由とともに、費用についても内訳を明確にご提示いたします。
ご予算に合わせたプランのご提案も可能ですし、ご納得いただけないまま治療を進めることは決してありませんので、安心してご相談いただければと思います。
未来の自分のために、今できること
ほうれい線は、あなたがこれまで豊かに表情を使い、人生を歩んできた証でもあります。しかし、その影が少し深くなったと感じたなら、それはご自身の顔と向き合う良い機会です。
頬のたるみとほうれい線の関係を正しく理解することで、闇雲なケアから卒業し、ご自身にとって本当に必要なアプローチが見えてきます。
どのような治療が自分に合っているのか、どのタイミングで始めるべきか。お悩みでしたら、ぜひ一度、私たちにご相談ください。あなたの肌の状態、骨格、そしてライフスタイルを総合的に診断し、最適な治療プランをご提案いたします。
一人で悩まず、二人三脚で、あなた本来の輝きを取り戻すお手伝いができれば、これほど嬉しいことはありません。